技術の世界には、一見すると超常現象のように思える不思議なトラブルが存在します。
IT業界には「PEBCAK(Problem Exists Between Chair And Keyboard)」という言葉があり、これは「椅子とキーボードの間に問題がある」、つまり「ユーザーの操作ミスが原因」を遠回しに示す用語です。
しかし、ここで紹介するトラブルは単純なユーザーエラーではなく、予想外の物理法則や複雑な因果関係によって引き起こされた実話です。
病院に入るとApple製品だけが沈黙する
現象
2018年、アメリカのイリノイ州にある病院で奇妙な現象が発生しました。特定のエリアに行くとApple製品(iPhoneやApple Watch)だけが完全に動作しなくなるのです。不思議なことに、Android端末には全く影響がありませんでした。
原因
この現象の犯人は、MRI装置から漏れ出した液体ヘリウムでした。ヘリウム分子は非常に小さいため、Apple製品内部のシリコン製MEMS発振器(時計の役割をする部品)の隙間に入り込み、振動を止めてしまっていたのです。Android端末などは水晶発振器を使用していたため影響を受けませんでした。
フラッシュ撮影が死の光線になる小型PC
現象
小型コンピュータ「Raspberry Pi 2」において、カメラのフラッシュを使って本体の写真を撮ると、その瞬間に電源が落ちて再起動する現象が報告されました。
原因
基板上の電源レギュレータ・チップ(U16)が、強い光に反応する性質を持っていたことが原因でした。チップのパッケージ(覆い)が不十分だったため、キセノンフラッシュの強烈な光が半導体に当たって光電効果が発生し、電圧が不安定になってシステムがクラッシュしていたのです。
音だけで壊滅したデータセンター
現象
スウェーデンのデータセンターやING銀行などで、消火設備の点検を行った際に衝撃的な事態が発生しました。火も水も出ていないのに、大量のハードディスク(HDD)が同時に故障し、システムが壊滅したのです。
原因
不活性ガス消火システムがガスを噴射する際の「音」が原因でした。ガス放出時のノイズが130デシベル以上の凄まじい音圧を生み出し、その空気振動がHDDの読み取りヘッドを揺らしてプラッタ(ディスク)に接触させ、物理的に破壊していたのです。
宇宙線が変えた選挙結果
現象
2003年のベルギー連邦選挙で、スハールベークという町である候補者の得票数が実際の投票数よりちょうど4096票多く集計される異常事態が発生しました。
原因
投票機のメモリに宇宙線(高エネルギー粒子)が衝突し、1ビットのデータを反転させてしまったことが原因でした。2進数の特定の桁(2の12乗=4096)のビットが0から1に書き換わったことで、正確に4096票が増えていたのです。これは「ソフトエラー」と呼ばれる現象として公式に認められました。
カーペットの色に呪われたオフィス
現象
あるオフィスで、特定の色のカーペットの上を歩いてからキーボードに触れると、PCがフリーズまたは再起動するという現象が発生しました。
原因
特定の染料や素材を使ったカーペットが、オフィスの低い湿度環境と組み合わさって異常に高い電圧の静電気を帯びやすくなっていました。人が歩くことで帯電し、キーボードに触れた瞬間に放電(ESD)が起き、PCの保護回路が作動してシャットダウンしていたのです。
海底ケーブルを襲う白い影
現象
GoogleなどのIT企業が敷設した海底ケーブルが頻繁に断線する現象が発生しました。
原因
光ファイバーケーブルには中継器への給電のために高電圧が流れており、そこから発生する微弱な電磁場が、サメの獲物を探す器官(ロレンチーニ器官)を刺激していました。サメがケーブルを獲物だと勘違いして噛み付いていたため、現在はケーブルにケブラー繊維などの防護シールドが巻かれています。
姿勢で変わるパスワードの運命
現象
1980〜90年代の重機工場で「座っているとログインできるが、立ち上がるとパスワードエラーになる」という奇妙な現象が発生しました。システム管理者が現地で検証しても再現し、周囲の技術者を巻き込む騒ぎとなりました。
原因
何者かのいたずらで、キーボードの2つのキーキャップ(キートップ)が物理的に入れ替えられていたことが原因でした。座っている時は慣れた姿勢のため、キーボードを見ずに打つタッチタイピング(ブラインドタッチ)を行います。指が正しいキー配置を記憶しているため、刻印が間違っていても正しいキーを入力でき、ログインに成功します。一方、立っている時は普段と違う姿勢・角度のため、キーボードの文字を目で見て確認しながら打ちます。その結果、入れ替わった「誤った刻印」を信じてキーを押してしまい、パスワードエラーになっていました。
バニラアイスだけがエンジンを止める
現象
ある顧客がゼネラルモーターズ(GM)に「バニラアイスを買った時だけ、車のエンジンがかからなくなる」というクレームを入れました。他の味(チョコやストロベリー)だと問題なくエンジンがかかるのです。
原因
バニラは人気商品で店の入り口付近にあり、購入時間が極端に短かったのです。そのため、エンジンを止めてからすぐに再始動することになり、エンジンが十分に冷めず、燃料が気化(ベーパーロック現象)して始動しませんでした。他の味は選ぶのに時間がかかるため、その間にエンジンが冷えて問題が起きなかったのです。
お茶を淹れるとネットが切れる謎
現象
ある会社で「中国人スタッフのAさんがお茶を淹れると、会社のインターネットが切れる」という現象が発生しました。
原因
Aさんが持参した中国製の電気給湯ポットが原因でした。お湯を沸かす際に強烈な電磁波ノイズが発生しており、それが近くのLANケーブルやルーター(特にADSLやVDSLなどのメタル回線)に干渉して通信を切断させていたのです。
光速が生んだ500マイルの壁
現象
システム管理者が「500マイル(約800km)より遠くへメールが送れない」という相談を受けました。近くの大学には届くのに、遠くの州には届かないのです。
原因
サーバーのOSアップグレード時に、メール送信のタイムアウト時間が誤って「3ミリ秒」に設定されていました。光の速さでも3ミリ秒では約500マイル強までしか信号が往復できないため、それより遠いサーバーへの接続はタイムアウトして切断されていたのです。
毎朝7時に消える村のインターネット
現象
ウェールズのアベレソサンという村で、1年半もの間、毎朝7時きっかりに村全体のブロードバンド接続が切れる現象が続きました。
原因
ある住民が毎朝7時にスイッチを入れる「中古のブラウン管テレビ」が原因でした。そのテレビが発する強力な電気的ノイズ(SHINEと呼ばれる単発インパルスノイズ)が、村の電話回線インフラ全体に干渉していたのです。
ジャネット・ジャクソンという名の脆弱性
現象
ジャネット・ジャクソンの曲『リズム・ネイション』を再生すると、特定のノートPCのハードディスク(HDD)がクラッシュする現象が発生しました。
原因
その曲に含まれる特定の周波数が、当時主流だった5400rpmのHDDの固有振動数と一致してしまったのです。共振によってHDDのプラッタが激しく振動し、動作不良を引き起こしました。現在はCVE-2022-38392として脆弱性認定されています。
IKEAの椅子が引き起こすブラックアウト
現象
特定のモニターを使用していると、席を立ったり座ったりするたびに画面が数秒間ブラックアウトする現象が発生しました。
原因
IKEAの人気チェア「マルクス(MARKUS)」と特定の服装の組み合わせによって、強力な静電気が発生していました。座面と背もたれの摩擦で生じた静電気が放電され、その影響が(シールド性能の低い)ディスプレイケーブルに飛び火し、信号が一時的に途切れていたのです。

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