飼育員2人が襲われ死亡した「秋田八幡平クマ牧場事件」とは

社会

2012年4月20日、秋田県鹿角市に位置する八幡平クマ牧場からヒグマ6頭が脱走し、2人の飼育員が命を落とすという悲劇が発生しました。
この事件についてウィキペディアの記事を元にまとめます。

事件の経緯

2012年4月20日の午前8時頃、冬季休業中の八幡平クマ牧場からヒグマ6頭が脱走した。当時、同牧場ではヒグマ23頭を含む合計29頭のクマが飼育されていた。餌場から女性従業員(当時75歳)の悲鳴が聞こえ、男性従業員が駆けつけると、クマに襲われている女性従業員の姿が目に入った。さらにもう1人の女性従業員(当時69歳)もクマに襲われて倒れており、声をかけても反応がなかった。男性従業員は直ちに秋田県警に110番通報を行った。

警察は正午過ぎに地元の猟友会に対してクマの射殺命令を下した。6頭中2頭は餌場内に隠れていたため、射殺は難航したが、午後4時には脱走したクマ6頭全てが射殺された。その後、クマの被害者となった女性従業員2人の死亡が確認され、1人の死因は頚椎損傷、もう1人の死因は外傷性ショックであることが判明した。

脱走の原因

事件発生時、ヒグマ用の運動場は地下に掘られ、高さ4.5mの壁で囲まれていたにも関わらず、そこからクマが6頭も脱走した。現場に駆け付けた消防隊員らは、数頭のクマが次々に壁を飛び越えて逃げ出す様子を目撃した。これについては、運動場内に壁に沿うように大きな雪山ができていたため、それを登って脱走に及んだと考えられている。

刑事責任

6月9日、当時牧場を経営していた68歳の男性と、牧場の従業員だった69歳の男性は、いずれも警察に逮捕され、刑事責任を追及された。逮捕容疑は主に業務上過失致死であり、もしも経営者がそれまで、従業員・飼育員にクマの飼育における適切な指示を出すなどしていれば、クマの脱走原因となる雪山の存在に気付き、2人の犠牲者を出す痛ましい騒動を防げたはずであったという。69歳の従業員に関しては、雪山ができるのを防ぐための除排雪作業を行わず、牧場内に雪を捨てていた疑いもあり、彼は「近くにクマが遊ぶためのプールがあるから、雪は溶けるだろうと考えた。」と話すものの、この行動が雪山を作る原因になった。後に彼らには罰金50万円の略式命令が言い渡された。

なお、この牧場では事件発生以前にも、多くの問題が相次いで指摘されていた。特に、クマの檻の老朽化にも関わらずそれを放置していたことや、個体差への配慮が不足していて弱いクマは与えられた餌を十分に確保できずに痩せ細ってしまったこと、あまり広くない敷地に多くのクマが収容されたことにより冬眠用の寝場所も確保されていなかったことなどが、主に問題視されていた。さらには、死亡したクマの死体を敷地内に埋めていたことから、これが不法投棄になるのではないかとの声もあったが、鹿角市は墓を作るなどして適切な埋蔵を行なっているため廃棄物処理法における廃棄物には該当せず、結局この行動に関しては違法ではないとの見解が示された。

牧場の閉鎖

この牧場は、もともと2012年秋には閉鎖される予定であったが、この事件を受けて早くも6月に幕を閉じた。その際、与える餌の量を減らして、飢えと熊同士の抗争で自然淘汰させるという案も出されたが、観光に影響する事を懸念した秋田県は、殺処分の決定を引き伸ばした。その後、支援金が集まり、県からも非常勤職員が派遣されたため、クマの飼育は継続されることになった。

クマの移送

事件を機に、秋田県はクマの受け入れ先を探すために日本動物園水族館協会に協力を要請。その結果、茨城県・高知県にある2つの施設から、ツキノワグマに限り受け入れ可能との回答を得た。さらに8月23日、北秋田市の阿仁熊牧場が、牧場施設の拡張や財政問題がクリアできれば全頭受け入れられると発表したため、秋田県知事はクマを2013年秋までに移送させたいとして、さっそく大規模な移送作業が実行された。2014年には移送されたクマの収容施設「くまくま園」がオープンした。

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