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プログレッシヴ・ロックとは革新的なロックを意味する。そのため、ロックの理想を追求するあまり、マニアックになりすぎる部分がある。結果的に売れるロックとなることもあるが、大概はミュージシャン自身の欲求を満たすためのものとなりがちである。
そういったプログレの世界にいるミュージシャン達が売れるための音楽をやったらどうなるか。その答がエイジアである。エイジアはプログレ・バンドにいたミュージシャンが集まってできたバンドである。結成当時、売れるロックをやろうと彼らが思っていたかどうかはわからないが、とにかく売れた。売れ筋のロックのことを産業ロックと呼ぶことがあるが、エイジアはまさにそのはしりである。
プログレをやっていた訳だから、テクニックに関しては申し分ない。プログレとは難解で理論武装しているような感じがするが、その音楽理論を売れる音楽にするために応用する。まさにロックの理想型がエイジアだ。メンバーはジェフリー・ダウンズ(キーボード、元バグルス)、スティーヴ・ハウ(ギター、元イエス)、カール・パーマー(ドラムス、元ELP)、ジョン・ウェットン(ボーカル、ベース、元キング・クリムゾン、UK)の四人。
デビュー・アルバム「エイジア」にはいわゆる捨て曲が一つもない。完璧と言ってよい内容である。全米チャートの年間1位にもなった。比較的、オーソドックスなラヴ・ソング中心でとてもメロディアスである。アレンジも奇をてらった所がない。しかし、随所でプログレ出身らしいテクニカルな面を披露している。そのバランスがとてもよい。
エイジアが登場した頃というのはちょうどMTVが勢いに乗り始めた頃でもあった。1983年にセカンドアルバム「アルファ」を発表。その年の12月に初来日した。MTVはこのエイジアの日本公演を「エイジア・イン・エイジア」と銘打って全米中継することを試みた。
しかし、来日直前にボーカルのジョン・ウェットンが脱退してしまい、代わりに元キング・クリムゾン、ELPのグレッグ・レイクが加入して来日した(彼もベースを弾きながら歌うというジョン・ウェットンと同じタイプ)。このときはステージのスケールの大きさが話題となった。キーボードのセッティングが凄かった。ありとあらゆる種類のキーボードがステージ後方の少し高いところの端から端まで並べられていたのだ。鍵盤は客席側に向けてあるためキーボード・プレイヤーのジェフリー・ダウンズは背中を向けたまま演奏することになる。そのかわり彼がどのように演奏しているかがよく見える。このことからもわかるようにエイジアの音楽的な主導権はダウンズが握っていた。これほどまで派手なキーボードのセッティングは他にはなかったし、その後のエイジアでもこのセッティングはされていない。「エイジア・イン・エイジア」の頃の機材のレベルでは、ステージの端から端までキーボードを並べないとレコードの音を再現できなかったのかもしれないが、それよりも、むしろ、派手なステージングの方に重きを置いていたに違いない。しかし、演奏の方はというとそれほどいいものではなかった。ボーカルのグレッグ・レイクのキーが合わないのである。レイクはロックの世界では歌のうまいことに定評がある。あのキング・クリムゾンの初代ボーカリストである。しかしキーが合わないことにはどうしようもない。
エイジア・イン・エイジアが終わった直後にジョン・ウェットンが復帰する。しかし、今度はスティーヴ・ハウが脱退してしまうなどごたごたが続き、デビュー当時の勢いはもう二度と戻らなかった。
エイジアは現在も存在しているが、メンバーが流動的であるため活動状態ははなはだ不安定である。

※この記事は1994年に書かれたものです。

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