stabucky blog

コンサート-中島みゆき(東京国際フォーラム)

一般的にコンサートの開演時間は、週末は午後6時とか6時半、平日は午後7時である。これは平日は仕事があるので、なるべく遅く開演する、という配慮に基づくものだと思う。

ところが、この中島みゆきのコンサートは、平日にも関わらず、午後6時半開演である。多分、観客の大半が家庭を持ち、中には主婦業を半ば放棄してきている者も多いからではないだろうか。なるべく早くやって、早く終わらせて、家庭に帰してあげようという気持ちの表れか。というわけで、私は仕事場が遠いので、午後5時の終業もそこそこに急いで会場である有楽町の東京国際フォーラムに駆けつけた。電車の乗り継ぎがよく、予定よりも早く着いた。

客層は、私がよくいくロックのコンサートとはまるで違う。おじさん、おばさんばかりである。そして、マナーが悪い。

ロックコンサートというと、髪の毛の長い恐そうなお兄さんばかりだという印象があるが、実際には礼儀正しい人が多く、実は女性も多い。コンサートが始まれば、狂ったように暴れるが、それまでは上品なものである。

しかし、今日の客はおじさん、おばさんばかりだが、列の順番は守らない、カメラチェックに協力しない、など、酷いものだ。そして、ちょっと頭のおかしい人もいるようだ。ぶつぶつとしゃべりながら、歩いている人が結構、いる。こういう人たちのせいで、世間が中島みゆきを誤解してしまうことになっているのではないだろうか。

席は37列目であった。この会場はかなり大きいが、横に広いので、後ろの方の席でも、ステージから遠いという印象はそれほどない。前の席に座っている人はパンフレットを購入したらしく、それを読んでいた。私はそれを後ろから覗き込む。なにやら曲のリストが書いてある。何と、曲順表がパンフレットに記載されているのである。これはロックのコンサートではあり得ない。演奏者はある程度の順番を決めておくが、その時の気分次第で、曲順を変える。実際にはそうでなくても、観客はそう思っている。そのため「あの曲は演奏してくれるだろうか」という期待と不安で、コンサートを迎える。中島みゆきはそうではないようだ。最初の曲が「あした」となっているのだけを確認して、私は目をそらした。

とにかく、客は静か。席に座って動こうともしない。そのため、開演時間を過ぎて出演者が出てこないと、待たされているという気になる。しばらくして、やっと中島みゆきが登場。プログラム通り、「あした」という曲からスタート。やはり私の思ったとおりであった(入場時には気が付かなかったが、終演後、会場の柱をよく見ると、曲順表が貼りだしてあった)。

よく中島みゆきは、松任谷由実と比較される。同じシンガーソングライター。年代も近い。中島みゆきは1952年(辰年)生まれ。今年、49歳になった。松任谷由実は1954年(午年)生まれの47歳。以前、松任谷由実のコンサートに行ったときは、彼女が登場したときに、生で見ていることに対して感動したが、今回の中島みゆきの場合は、そうではなかった。歌とその声に感動した。独特のビブラートのかかった声を聴いて、これは凄い歌手だと改めて感じた。声の存在感があった。中島みゆきの歌は、やはりこの声でないとダメなのだ。

NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」の主題歌である「地上の星」を歌ったことで、中島みゆきは今年、注目された。「プロジェクトX」は、戦後の日本の復興に関わった、無名の技術者に光を当てた番組だ。エンジンの開発者、宮大工など、いろいろな人が登場している。実は去年から、この番組は始まっていて、この主題歌も去年、発表されている。しかし、人気が出たのは今年になってからだ。じわじわと広まったという感じだ。中高年のおじさんたちは、この歌を聴いただけで、番組の情景を思い出して、泣き出してしまうらしい。それで、紅白歌合戦出演の打診があったそうだが、これを断ったという。残念なことだ。

感動の中で始まった今日のコンサート。困ったことに、私の右後方に変な客がいた。ぶつぶつ独り言をいう変な客がいると先ほど書いたが、この客もその1人だ。コンサートが始まったところで「な、か、じ、ま、さあん」と変な抑揚でかけ声をかけていた。これだけならばよくいる客だが、人間というのは不思議な感覚を持っていて、理由がはっきりしなくても「こいつ、おかしいぞ」と感じるものだ。私はその時、おかしいと感じていた。

この客、曲の間にまた騒ぎ出した。「だったら、ルツコみたいに???(意味不明)しろよ」などといって、訳が分からない。ルツコというのは、フォークシンガーの本田路津子のことだろう。かなりマニアックなファンだ。それとも、中島みゆきファンはみな、本田路津子のことを知っているのだろうか。後で知ったのだが、彼のすぐ前の席の二人の客は、彼が騒ぎ始めるとすぐに席を立ってどこかにいってしまったらしい。私は、もう少し様子を見て、うるさいようだったら、注意しようと思っていた。それまでは、無視することにした。この男、なおも訳の分からないことをいう。曲が終わると「中島さん、質問があります」などという。聞こえるわけないだろう。それでも、何を訊きたいのか興味があったのだが、ついに係員がきて、取り押さえられていた。「しゃべってないですよ」などといっている。ずいぶん、長く説得されていた。そのうち静かになって、いつの間にかいなくなっていた。連れ去られたらしい。「もっとよい席をご用意します」なんていわれて、別室に連れていかれ、リンチされているかもしれない。

やはり、おかしな客がいるぞ、このコンサートは。

昔の曲も演ったが、大半は、最近の曲で、やはり感動するのは昔の曲だというのは、どのコンサートでも同じ。開演前に、客に一言を紙に書かせ、それをコンサートの最中に読み上げるという企画があった。歌っている間に、裏で放送作家が3人で、一言から、面白そうなのを選んでおく。そのために3人、ツアーに同行しているらしい。ラジオ番組みたいでなかなか面白い企画であった。

午後9時頃、終わり。演奏曲順が決まっているのだから、アンコールも意味がない。さっと客電がついてお終い。2時間半は、思ったよりも長かった(これは「感じたよりも実際の時間が長くてあっという間だった」という意味ではなく、「2時間くらいで終わると思っていたのに2時間半もやった」という意味)。

関連記事

[2001-12-06]

レポート,中島みゆき,東京国際フォーラム,有楽町

ケイン・コスギ | 田代まさしが覚醒剤で逮捕