Pyromania - Def Leppard

デフ・レパード。耳の聞こえない豹という意味である。「大音量で練習しすぎて耳が聞こえなくなりそうだ」ということから命名したと記憶している。「Deaf Leopard」が正しいスペルだが「「Def Leppard」の方が格好良いという理由で表記を変えた」とボーカルのジョー・エリオットが言っていた気がする。
アルバム「パイロマニア」は彼らの出世作で、ロックの名盤を10枚選ぶとすると、私はこれを入れると思う。邦題は「炎のターゲット」でさすがに原題「放火魔」は拙いと思ったのだろう。賢明な判断だ。このアートワークも同時多発テロの後だったらアウトだっただろう。

1970年代の終わりにニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルというのがあった。イギリスでヘヴィ・メタルの大ブームが起きたことを指す。パンクがハード・ロックへのアンチテーゼならば、このブームはパンクへのアンチテーゼであると認識している。この中で最も成功を収めたのがアイアン・メイデンである。多くのバンドは、直線的なリフ、攻撃的なボーカル、そしてブリティッシュ・ロックならではの哀愁があった。
デフ・レパードもこのブームの中から生まれたバンドであるが、他のバンドに比べ、メンバーが若かった。デビュー時はメンバーが全員、ティーンエイジャーだったように思う。
音楽性も他の同時期のバンドとは異なっていた。シンプルながら工夫されたリフ、バッキング、コーラス。スロー・テンポの曲でそれは際立つ。モダンと呼んでもいいかもしれない。しかしブリティッシュ・ロックの哀愁はやはり備えていた。彼らは 他のバンドと切磋琢磨するというより、パンク以前のブリティッシュ・ロックから直に影響を受けていたのではないか、という気がする。

ブリティッシュ・ロックの哀愁。イギリス出身のロック・ミュージシャンが創り出す音楽には何とも言えぬ暗さがある。それがメロディにあるのか、コードにあるのか、展開にあるのか、音質、声質にあるのか。「ロンドンの霧深い気候に原因があるのではないか」という評論家もいた。真相は知らない。
この哀愁はデフ・レパードの大きな武器で、「パイロマニア」の後、さらにモダンで派手なサウンドを引っさげアメリカで大成功するのだが、やはり明るい曲にもブリティッシュの哀愁が漂っていた。

この「パイロマニア」に収録された曲はどれも素晴らしい。思わず一緒に歌いたくなる、覚えやすいコーラス、シンプルなアレンジ。この後、ゴージャスな方向に向かう前の良質で新しいブリティッシュ・ロックの形がここにはある。

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[2015-02-08]

Def Leppard,1983年

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