プログレッシヴ・ロックというのは先鋭的なロックとか実験的なロックとか、およそ、そのような意味の言葉なのだが、狭義では1970年代にイエス、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、エマーソン・レイク&パーマー、ジェネシスなどのバンドが始めた音楽形態を指すことが多い。広い音楽のジャンルから考えればロックであることには変わりないが、ロックというジャンルの中では異端の位置にある。プログレッシヴ・ロックはその言葉の意味からすれば、常にその時代の最先端のロックでなければならないのだが、実際は違う。現在もここに挙げたプログレッシヴ・ロックの代表的な5つのバンドは現在も活動を続けている。他の多くのロック・バンドがロックをとりまく環境の変化に適応できずに解散を余儀なくされているのに対し、これらの5つのバンドは現在も、大きな観点で見れば、1970年代当時とほとんど変わらぬタイプの曲を演奏している。つまり、進歩的であるはずのロックが実は旧態依然としたロックであったということになる。プログレッシヴ・ロックはすでに進歩的なロックという意味を持ち合わせていない。繰り返すが、プログレッシヴ・ロックとは1970年代に流行したロックの一形態を指す言葉である。
その特徴は、一言では言えない。上に挙げた5つのバンドはプログレッシヴ・ロックというジャンルで一つにまとめられてしまうことが多いが、演奏する曲はタイプが全く違う。また、プログレッシヴ・ロックと呼ばれるバンドはこの5つ以外にも数多く存在する。しかし、あえて特徴を挙げるとすれば、曲の構造が複雑であること、それに伴い、演奏には非常に高度な技術を必要とすることと言えるだろう。
邦題は「原子心母」である。LPのA面すべてを使うという大変長い曲であるが、このような組曲形式は他のプログレッシヴ・ロックにも見受けられる手法である。ピンク・フロイドには「エコーズ」という、やはりLPの片面すべてを使った曲がもう一つある。
邦題は「21世紀の精神異常者」。ロバート・フリップというギタリストが率いるバンドであり、現在も彼を中心として活動している。メンバー・チェンジの多いバンドで、オリジナル・メンバーで現在も残っているのはリーダーのロバート・フリップだけである。腕に自身のあるミュージシャンの寄せ集めバンドであるため、音楽的な問題でメンバー間の衝突が多いのが、その原因だろう。この曲は彼らのデビュー・アルバムである「クリムゾン・キングの宮殿」(「キング・クリムゾンの宮殿」ではない。なぜか「クリムゾン・キング」なのだ)の冒頭に収録されている。
プログレッシヴ・ロックは曲が長くなりがちである。イエスにもその傾向があるが、この曲はコンパクトにまとまっている。アルバム「こわれもの」に収録された彼らの代表作である。
原曲はムソルグスキーの「展覧会の絵」であり、いくつかの曲を「プロムナード」という短い曲でつないでいく組曲形式になっている。エマーソン・レイク&パーマーはこの「展覧会の絵」をロックにアレンジして丸ごとライブ演奏した。この演奏をそのまま録音したものが彼らの3枚目のアルバムとなった。キーボード、ベース、ドラムスの3人組でベーシストのグレッグ・レイクは元キング・クリムゾン。「21世紀の精神異常者」のボーカルは彼である。
ジェネシスも1970年代のプログレッシヴ・ロックを支えたバンドの一つである。ピーター・ガブリエルというカリスマをボーカルに据えたワンマン・バンドといってよい。この点は他のプログレッシヴ・ロックのバンドがテクニシャンの寄せ集め的な要素を持っていた点と大きく異なる。案の定、ピーター・ガブリエルは脱退して、ソロ活動を開始する。ジェネシス自体はドラマーにボーカルを兼任させるというスタイルで活動を継続する。そしてピーター・ガブリエル在籍時よりもバンドの人気は大きくなった。このドラマーの名をフィル・コリンズという。
上に挙げたバンドはどれもプログレッシヴ・ロックとして頂点をきわめたバンドであるが、このキャメルはそれらに比べると落ちる。この「レディ・ファンタジー」は彼らの名曲中の名曲。
※1997年に書かれた記事です。
[2020-05-09]
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