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命の値段

命の値段はどうはかるのか。そんなもの、値段が付けられない、と言うかもしれないが、現実には人の命を金に換算する場面が非常に多い。
考え方としては、その人が死んだ場合、それを代替するためにはいくらかかるか、という方法。あるいは、その人がその後の人生でいくら稼ぐことができるか、という方法。若い人ならば、無限の可能性があるのだろうが、老人はどうなのだろうか。

散歩中の飼い犬が近づいた拍子に転倒し、骨折した女性(当時79)が、入院治療中にぜんそくの発作を起こして死亡した――。この女性の遺族が、骨折が死亡につながったとして、犬の飼い主側に約2400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁の飛澤知行裁判官は17日、「骨折と死亡との因果関係は否定できない」と指摘。犬のひもをしっかり固定していなかったとして、飼い主の過失を認め、約657万円の支払いを命じた。

この事件は、79歳の女性がその後の人生でいくら稼ぐことができるか、という問題に置き換えることができる。
厚生労働省のサイトにいくと平成13年簡易生命表というのがあって平均余命というのがわかる。「あと何年生きられるか」を示す。0歳の平均余命を特に平均寿命という。平成13年のデータでは女性の平均寿命は84.93歳。よく勘違いされるのは、80歳の女性の場合、平均して「あと4.93年生きられる」と考えることだが、80歳の平均余命は10.80年。つまり80歳の女性は平均して90.80歳まで生きるということになる。
話を元に戻すと、この犬が近寄ったくらいで、転んでしまった女性はあと約12年ほど生きられたということになる。パートタイマーとして働いて、年間100万円稼ぐとなると、死ぬまでに1200万円を稼ぎ出す計算だが、犬が近寄ったくらいで転ぶような人がそんなに稼ぐことができるだろうか。まして、2400万円の損害賠償なんて、どうやって計算したのだろうか。犬が近寄ったくらいで転んで骨を折るような人が年収200万円である。
また、因果関係がなかったから657万円ということだが、因果関係があったらどうだというのだろう。つまり裁判官もこの犬が近寄ったくらいで転んで骨を折り、なぜか喘息の発作を起こして死亡してしまうような人の命の値段は、もうちょっと高いということなのだろうか。
こうやって見てくると、命の値段は「いくら稼ぐか」では分からないということなのだ。
経過はどうあれ、この女性は79歳という高齢でありながら、657万円を稼ぎ出した。「いい仕事をしてますね」。合掌。

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[2003-02-17]

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