Alice in Hell - Annihilator

アナイアレイターはアルバム「アリス・イン・ヘル」でデビューする。
前にも書いた通り、ギタリストのジェフ・ウォーターズのバンドであり、デビュー・アルバムにはもう一人のギタリストの名前がクレジットされているが、実際にはウォーターズが一人で弾いているらしい。

ヘヴィ・メタルの場合、ギタリストが二人であることがほとんどである。一人では音の厚みが絶対的に足りないのである。例えばブラック・サバスにはギタリストが一人しかいないが、スタジオ・アルバムではほとんどの場合、ギターの音を重ねている。
ギターの音を重ねる場合、音色が同じものを重ねた方が良いケースが多い。
しかしギタリストが二人いれば必ず音色は違う。
「アマは他人と同じ音を出し、プロは他人と違う音を出す」と言っていい。つまり、アマチュアはプロという他人の音を真似ようとする。プロは他のプロと違う音を出そうとする。
一人がリード・ギターで、もう一人がリズム・ギターならば、問題はない。
同じリフ、フレーズを二人のギタリストが弾くと必ずズレが生じる。これは個性だから仕方がない。
メタリカはつい最近までアルバムにおけるリフは全てジェームズ・ヘットフィールドが弾いていた。リード・ギターはカーク・ハメットが担当し、ライブではリフも弾くが、アルバムではヘットフィールドが全てのリフを弾いていたというのだ。リフに関してはヘットフィールドの方が安定した演奏ができるからという理由らしい。
私はもう一つの理由を考えている。同じギタリストが重ねて弾いた方が美しいからである。メタリカはおそらくそう考えていた。「アンド・ジャスティス・フォー・オール」に至ってはベースの音が聞こえない。ギターのリフだけを重ねた方がタイトになると考えていたからに違いない。実際は重ねすぎたのか音がかたまって聞こえる。過ぎたるは及ばざるが如し。

アナイアレイターの場合、デビュー・アルバムのギターは全てウォーターズが弾いており、おそらく他のアルバムも全てウォーターズが弾いているはずである。
デビュー・アルバムで既に叙情的なフレーズも使われているが、如何せん、ボーカルが豪球一本槍であるため、スラッシュ・メタル以外の何物でもなくなっている。
一方でスラッシュ・メタル、スピード・メタルの当時の最先端を進んでいたのがこのバンドであったと言ってもよい。ジェフ・ウォーターズが技術、情熱を傾けて作り上げたアルバムである。カナダの若き天才がメタル・シーンをこれからどのように変えるのか、期待を持たせるアルバムだった。
「地獄のアリス」という誰でも思い付きそうなタイトルを付けたアルバムは私の知る限り世の中にはこれしかない。

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[2015-11-01]

Annihilator,1989年,デビュー

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