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「百舌の叫ぶ夜」

逢坂剛の「百舌の叫ぶ夜」を読んだ。昨夜、「明日から仕事だ、早めに寝よう」というのが、ダメで、なかなか眠れない。眠れないときは、本を読む。面白い本だとダメだ、眠れない。で「百舌の叫ぶ夜」を読んだ。面白い、ダメだ、眠れない。と気付くと午前3時を回っていた。最後まで読んでしまった。
逢坂剛は「カディスの赤い星」という本で、直木賞を取っている。電通だか、どこだかのサラリーマンが、受賞したということで、当時から名前だけは知っていた。ミステリーといっても、その中身は幅が広く、私が好むのは「本格」と呼ばれるもので、密室だのアリバイだの名探偵だのが登場する奴だ(これが「本格」の定義ではないが)。読んだことはないが、逢坂剛のはミステリーでも「サスペンス」とか「ハードボイルド」とか呼ばれるものに違いない、と思い込んでいた。ということで、読んだことがない。
しかし、「本格」のミステリー・ガイドに、この「百舌の叫ぶ夜」が紹介されていたので、ちょうど、古本屋で見つけたこともあり、読んでみることにした。私の感覚だと「本格」ではなかったが、次第に「本格」らしい手法が使われはじめる。
「本格」には「叙述トリック」というのがある。磁石を使って窓を開け閉めするのが普通の「トリック」ならば、「叙述トリック」は言葉、文章を使う。著者が読者に対して仕掛けるトリックである。昨日のことだと思わせて実は一昨日のことだった、とか、夫だと見せかけて実は父だった、とか。これは「本格」ミステリーに特有の手法である。「百舌の叫ぶ夜」にはこれが使われている。全体に流れるのは、「百舌」と呼ばれる孤独な殺人者の物語なのだが、この小説のメイントリックはこの「叙述トリック」である。「本格」のミステリー・ガイドに紹介されていることに納得し、この面白い小説を紹介してくれたことに感謝した。

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[2001-01-04]

桂三木助 | ロト6