Balls to Picasso - Bruce Dickinson

ブルース・ディッキンソンがアイアン・メイデンを脱退したのは、ロブ・ハルフォードがジューダス・プリーストを脱退したのと、ほぼ同じ時期であった。二人ともその脱退の理由が自分のやりたい音楽をやりたいということであったと思う。
そのブルース・ディッキンソンのソロ・アルバムが出た。アイアン・メイデンが新しいボーカリストを加入させてニュー・アルバムを出すより早くである。当然かもしれない。
しかし、その彼のアルバムを聴くと本当にメイデンを脱退してよかったのかという疑問が湧いてくる。ファースト・シングルとなったのはアルバムのラストを飾る「ティアーズ・オブ・ザ・ドラゴン」であるが、起伏の激しい、実にアイアン・メイデン的な構成を持っているのである。これはブルース自身の在籍時、最後のアルバムとなったアイアン・メイデンの「フィア・オブ・ザ・ダーク」のタイトル曲と似ている。
「フィア・オブ・ザ・ダーク」のクレジットはスティーヴ・ハリス、一人だけになっている。これは典型的なアイアン・メイデンらしい曲であることを示唆している。ブルースはアイアン・メイデンらしさに嫌気をさしたはずなのに、つまりスティーヴ・ハリスの方法論に疑問を唱えて、アイアン・メイデンを脱退したのに、同じようなことをソロ・アルバムでもやっているわけだ。
この曲だけではない。まぎれもない、ブルースのソロ・アルバム「ボールズ・トゥ・ピカソ」は、全曲ミドル・テンポの曲で占められている。本当にこれがやりたかったのか。

※1994年に書かれた記事です。

[2025-05-06]

Bruce Dickinson

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