ボストンのニュー・アルバム「ウォーク・オン」がついに発表された。1994年は凄い年になる。ピンク・フロイドが長い沈黙から目を覚まし、ニュー・アルバムを発表したのも1994年。そしてそれは素晴らしいアルバムだった。ボストンのニュー・アルバムも期待通りの出来だ。
前作「サード・ステージ」は歌に焦点を当てたような作りであったが、「ウォーク・オン」は音に焦点を当てている。すさまじいほどの“音”である。そして彼らはここで彼らのこだわりをみせる。インナースリーヴにはこう書いてある。
このアルバムはリール方式のアナログ・テープを使って録音された。ほとんどのパートはコンピュータなどのデジタルな処理・演奏よりも、むしろ、昔ながらの楽器によって実際に演奏されている。
手拍子はドラム・マシンではなく、実際に人間が手拍子している。
ハモンドとレスリーはシンセサイザーではなく、本物のハモンドとレスリーを使っている。
ピアノはサンプラーではなく、本物のピアノである。
風の音はノイズジェネレーターによるものではなく、本物の木にあたる風を実際に使っている。
クラヴィネットと弦楽器は実際に…、そうさ、完璧にできる奴なんていないよ。
クイーンも同様の文言を書いていた。「ノー・シンセサイザー」。ただし彼らはこの文言を後のアルバムでは書かなくなった。実際に使うようになってしまったからだ。
シンセサイザーを使わないで録音することは決して不可能なことではない。しかしボストンのような分厚いサウンドをシンセサイザーなしで録音するのはかなり困難ではないかと推測される。
ボストンはバンドという形態をとっているが実際にはトム・シュルツのソロ・プロジェクトであるといってよい。ギターだけでなくベースやキーボードの類も自分で演奏している。プロデュースだけでなくエンジニアとしての仕事もしている。
インナースリーヴにはかなり詳しいレコーディング・データが記載されていてなかなかおもしろい。たとえば、3曲目の「リヴィン・フォー・ユー」のイントロのストリングスはシンセサイザーではなく本物らしいこと(ボストン・フィル・ハーモニック)が書いてある。

コメント