日経平均株価が大きく上昇しています。
しかし「自分の持ち株はそんなに上がっていない」という声も少なくありません。
日経平均の上昇は、日本の株式市場全体の上昇を反映しているのでしょうか。
それとも、一部の銘柄だけが突出して上がっているのでしょうか。
この疑問を検証するため、東証上場の全銘柄株価スナップショット(2024年6月末〜2026年6月初頭)を使って調べました。
使用データと分析方法
- 期間:2024年6月30日 → 2026年6月3日(約2年間)
- 対象:東証・名証・福証・札証に上場する個別株(ETF・REITは除外)
- 銘柄数:3,691銘柄(両日付に株価が存在するもの)
業種分類はJPX(日本取引所グループ)が公開している上場銘柄一覧(東証33業種)を使用しました。
日経225銘柄については、2024年6月・12月、2025年6月・12月、2026年6月の5時点のデータを照合し、株式分割が行われた銘柄を特定したうえで上昇率を補正しています。株式分割とは1株を複数株に分割する仕組みで、たとえば1:10分割では株価が10分の1になりますが、保有株数が10倍になるため実質的な価値は変わりません。補正を行わないと、分割した銘柄が実際には上昇しているにもかかわらず大幅な下落として記録されてしまいます。
なお、全上場株(3,691銘柄)の集計については分割の網羅的な検証が難しいため、補正なしの数字を使用しています。下落比率はやや過大な可能性があります。
結論:上がったのは半分以下、しかも一部に偏っている
まず全体の結果を見てみましょう。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 上昇した銘柄 | 1,894社(51.3%) |
| 下落した銘柄 | 1,788社(48.4%) |
| 上昇率の平均 | +13.5% |
| 上昇率の中央値 | +1.2% |
日経平均が大きく上昇している期間にもかかわらず、約半数の銘柄は下落していました。
そして平均(+13.5%)と中央値(+1.2%)の大きな乖離が、この分析の核心を示しています。
一部の銘柄が突出して上昇し、平均を大きく引き上げています。大多数の銘柄はほぼ横ばいか、むしろ下落しています。
市場セグメント別の実態
東証のセグメント別に見ると、明確な差が現れました。
| セグメント | 銘柄数 | 平均 | 中央値 | 上昇割合 |
|---|---|---|---|---|
| 東証プライム | 1,546 | +17.7% | +4.7% | 55% |
| 東証スタンダード | 1,540 | +16.5% | +3.6% | 55% |
| 東証グロース | 516 | −7.0% | −22.0% | 30% |
| その他(地方) | 89 | +9.3% | −1.1% | 49% |
グロース株の惨状が際立ちます。銘柄の7割が下落し、中央値はマイナス22%でした。
「成長株」に投資した個人投資家にとっては、厳しい2年間だったといえます。
業種別の明暗
33業種に分けて分析すると、勝ち組と負け組がはっきりと分かれました。
上昇した業種(中央値順)
| 業種 | 中央値 | 平均 | 上昇割合 |
|---|---|---|---|
| 銀行業 | +69.5% | +60.7% | 79% |
| 非鉄金属 | +57.5% | +199.8% | 77% |
| 電気機器 | +28.2% | +57.9% | 69% |
| 倉庫・運輸関連業 | +27.6% | +22.6% | 81% |
| 建設業 | +13.3% | +34.1% | 65% |
非鉄金属は中央値+57.5%に対して平均が+199.8%と異常に高い水準です。
古河電気工業・三井金属という銅関連銘柄の爆発的な上昇が平均を大きく引き上げています。
下落した業種(中央値順)
| 業種 | 中央値 | 銘柄数 | 上昇割合 |
|---|---|---|---|
| 情報・通信業 | −10.8% | 563 | 37% |
| 医薬品 | −13.2% | 76 | 36% |
| サービス業 | −9.2% | 502 | 37% |
| 小売業 | −5.0% | 318 | 41% |
情報・通信業とサービス業だけで1,000社超が含まれます。
これだけの規模の業種が軒並み過半数下落しているという事実は、「日経平均上昇=株式市場全体の上昇」という認識が誤りであることを示しています。
日経平均225銘柄に絞ると?
日経平均を構成する225銘柄(今回は223銘柄を取得)に絞って、株式分割を補正したうえで分析しました。
| 指標 | 日経225(分割補正済み) | 全上場株※ |
|---|---|---|
| 上昇銘柄 | 167社(75%) | 51% |
| 下落銘柄 | 56社(25%) | 48% |
| 平均上昇率 | +38.6% | +13.5% |
| 中央値 | +22.9% | +1.2% |
※全上場株は分割補正未実施のため参考値。
日経225は全市場と比べて明らかに上昇銘柄が多く、平均・中央値ともに高い水準です。
ただし、日経225の中でも業種間の格差は大きく、以下の業種は補正後もマイナスが続いています。
| 業種 | 銘柄数 | 中央値 | 上昇割合 |
|---|---|---|---|
| 鉄鋼 | 3 | −31% | 0%(全滅) |
| 輸送用機器 | 11 | −14% | 27%(3銘柄のみ) |
自動車関連業種の苦境が数字に現れています。11銘柄のうち上昇したのはスズキ・いすゞ・川崎重工業の3社のみで、トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・SUBARUなど主要自動車メーカーはすべて下落でした。
日経225 上昇・下落ランキング(分割補正済み)
上昇率 TOP10
| 銘柄 | 業種 | 上昇率 |
|---|---|---|
| 古河電気工業 | 非鉄金属 | +1,203% |
| 三井金属 | 非鉄金属 | +826% |
| 太陽誘電 | 電気機器 | +720%(1:2分割補正) |
| 住友電気工業 | 非鉄金属 | +458% |
| レゾナック・HD | 化学 | +431% |
| アドバンテスト | 電気機器 | +331% |
| SUMCO | 金属製品 | +285%(1:2分割補正) |
| 住友ファーマ | 医薬品 | +260% |
| イビデン | 電気機器 | +235% |
| NGK(日本碍子) | ガラス・土石製品 | +215% |
下落率 WORST10(分割補正済み)
| 銘柄 | 業種 | 上昇率 |
|---|---|---|
| 東宝 | 情報・通信業 | −74% |
| アサヒグループHD | 食料品 | −74% |
| 第一三共 | 医薬品 | −54% |
| 三井化学 | 化学 | −52% |
| オリエンタルランド | サービス業 | −51% |
| 大日本印刷 | その他製品 | −50% |
| IHI | 機械 | −48% |
| ブリヂストン | ゴム製品 | −45% |
| 資生堂 | 化学 | −44% |
| エーザイ | 医薬品 | −43% |
内需型消費財・医薬品・エンタメが並ぶ構図になっています。
まとめ
この2年間の株価動向を一言でいえば、「日経平均は上がったが、恩恵を受けたのは一部」です。
- 全上場株のうち上昇したのは約半数(51%)。グロース株に限れば7割が下落していました
- 上昇の主役は銅関連(古河電工・三井金属)、半導体関連(アドバンテスト・太陽誘電)などごく一部の銘柄です
- 自動車・内需消費系は総じて苦戦。トヨタ・ホンダをはじめ主要自動車株は軒並み下落でした
- 日経225は分割補正後で上昇75%・下落25%。大型株中心の構成が全市場との差を生んでいます
- 日経225の下落銘柄は東宝・アサヒ・第一三共・オリエンタルランドなど内需系消費財・医薬品・エンタメが中心です
日経平均という指数は、特定の大型株・特定の業種の影響を強く受けるため、「日経平均が上がった=日本株全体が好調」とは必ずしも言えません。
自分のポートフォリオがどの業種・セグメントに集中しているかを意識することが、より正確な現状把握につながります。
分析に使用したデータ:東証全銘柄株価スナップショット(2024年6月〜2026年6月)/業種分類:JPX上場銘柄一覧(東証33業種)


コメント