混沌こそ我が墓碑銘
ジミ・ヘンドリックスは、同業のミュージシャンたちから複雑な感情を向けられることもありました。嫉妬、批判、戸惑い——それぞれの「本音」をまとめます。
元メガデスのギタリスト、マーティ・フリードマンは、ヘンドリックスへの嫌悪感を非常に率直な言葉で語っています。
「ヘンドリックスを聴くくらいならガラスを噛んだほうがマシ」とまで言い切り、その音楽から連想するのは「LSDでトリップした大勢のヒッピーが泥の中で転げ回っているイメージ」だと述べています。
フリードマンはノイズやフィードバックを好まず、音程のズレにも強い抵抗感を持っているため、ヘンドリックスのスタイルが根本的に合わないようです。後にこの発言がメディアに批判されると、「友人同士で話すような口調だった」と弁明しています。
前衛音楽の巨人フランク・ザッパは、ヘンドリックスに対して音楽的・人間的な両面から批判的な見方をしていました。
まず、「薬物を使うべきではなかった人物」と断言し、薬物が彼の才能を損なっていたと考えていました。音楽的にも、初期の荒々しい作品は評価しながら、実験的になるにつれて「面白くなくなり、内容が薄くなった」と指摘しています。
楽譜を読めないヘンドリックスについては、譜面に書ける人物と協力すべきだったが「他のことに忙しすぎてそのアプローチがとれなかった」と、音楽的姿勢の甘さを批判しています。
なお、プライベートではヘンドリックスがザッパ家を訪問した際にダンスでベルベットのズボンを破いてしまい、ザッパの妻が縫い直してあげたという微笑ましい逸話も残っています。
エリック・クラプトンはヘンドリックスの才能を認めながらも、そのステージ演出には複雑な感情を抱いていました。
クラプトンが問題視したのは、当時のイギリス人が黒人に投影しがちなステレオタイプ(性的・魔法的なイメージ)を、ヘンドリックスが「極限まで利用した」と感じた点です。歯でギターを弾くといった派手なギミックについては、「観客がそれを喜ぶなら、彼は観客を馬鹿にしていた」とまで述べています。
そうした「くだらないこと」を削ぎ落とせば素晴らしい才能が見えるのに、というのがクラプトンの本音でした。
ジェフ・ベックの場合は、批判というよりも強烈な「脅威」として受け止めていたケースです。
ヘンドリックスがロンドンに現れた際、ベックはリッチー・ブラックモアに「この男をどうにかしなきゃいけない。彼はここの連中をみんな打ちのめし、動揺させているんだ」と告げたといいます。ヘンドリックスの登場によって、自分たちが「ゴミ箱の中に放り込まれた」ように感じていたとも語っています。
これは嫌悪というよりも、圧倒的な才能を目の当たりにした者の率直な狼狽といえます。
ザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼントは、ヘンドリックスによって自分のアイデンティティを根底から揺るがされた一人です。
楽器破壊などの過激なステージ・パフォーマンスを自分の専売特許と思っていたタウンゼントは、ヘンドリックスにそれを「奪われた」と感じ、「完全に、徹底的に打ちのめされた」と吐露しています。
さらに、マーシャルアンプの購入をヘンドリックスにアドバイスしたことも深く後悔しており、「教えなければよかった。あいつは大音量がなくても十分すぎるほど才能があったのに」と語っています。白人がR&Bをやっていた時代に、ヘンドリックスが「本職としてそれを奪い返しに来た」という敗北感も率直に認めています。
5人のミュージシャンのヘンドリックスへの感情をまとめると、以下のようになります。
それぞれの感情の背景は異なりますが、共通しているのはヘンドリックスの存在があまりにも大きかったということです。嫌悪も批判も、ある意味でその偉大さの裏返しといえます。
[2026-04-20]
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