King of the Kill - Annihilator

昔、伊藤正則が「スレイヤーのライブで眠ってしまった」と言っていた。スレイヤーは轟音の極北と言ってもいいほどなのだから眠れるはずはないのだが、演奏がタイトだとうるさくないらしい。

これは分かる気がする。私はアナイアレイターを聴くとそんな感じになる。スレイヤーが殺し屋ならばアナイアレイターは壊し屋。ギターの演奏に限ればスレイヤーよりも速くタイトで音の粒が揃っている。
例えばアルバム「キング・オブ・キル」に収録の「フィアスコ」がそうだ。タイトルは大失敗という意味だが、曲は違う。ギターのアルペジオで静かに始まり他の楽器が徐々に重なる様式を踏襲しているが、ギターが密度の濃いフレーズを奏でると途端に「轟音の静寂」が訪れる。

これは松尾芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」に通じる。山寺として知られる立石寺を訪れた際の俳句で、セミの鳴き声があまりに大きいために却って静寂を覚えた、と私は解釈している。
音は大小の差があって初めて認識される。空間が音で埋め尽くされたときに人は静寂を感じる。
私はアナイアレイターを聴いてそう感じた。

私は実際に立石寺に行ったことがある。見事な景観だった。雪景色であったが。

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[2014-12-12]

Annihilator,1994年

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